令和4年度 税制改正大綱が発表されました

令和4年度 改正点概要

 令和3年12月24日に令和4年度 税制改正大綱が発表されました。

 改正点概要は、以下のようになっております。

 

個人所得課税

○ 住宅ローン控除制度の見直し
・住宅ローン控除の適用期限を4年延長し、令和7年末までの入居者を対象とするとともに、カーボンニュートラルの実現の観点から、省エネ性能等の高い認定住宅等につき、新築住宅等・既存住宅ともに、借入限度額の上乗せを行う。
・控除率を 0.7%とするとともに、所得要件を 2,000 万円とする。
・新築住宅等について控除期間を 13 年とするほか、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅について、合計所得金額 1,000 万円以下の者に限り、40 ㎡以上の住宅を控除対象とする。

資産課税

○ 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の見直し
・格差の固定化防止等の観点を踏まえ、限度額を見直した上で、適用期限を2年延長する。
○ 登録免許税におけるキャッシュレス納付制度の創設
・登録免許税をクレジットカード等により納付することを可能とする制度を創設する。
○ 土地に係る固定資産税等の負担調整措置
・土地に係る固定資産税等の負担調整措置について、令和4年度に限り、商業地等に係る課税標準額の上昇幅を、評価額の 2.5%(現行:5%)とする。

法人課税

○ 積極的な賃上げ等を促すための措置
-大企業等-
・令和5年度末を期限として、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が3%以上である場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の 15%の税額控除を行うとともに、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が4%以上である場合には、税額控除率に 10%を加算し、教育訓練費の対前年度増加割合が 20%以上である場合には、税額控除率に5%を加算する措置を講ずる。
・令和5年度末を期限として、法人事業税付加価値割において、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が3%以上である場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額を付加価値額から控除する措置を講ずる。
・一定規模以上の大企業に対しては、給与の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針等を公表していることを要件とする。
-中小企業-
・雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が 1.5%以上である場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の 15%の税額控除を行うとともに、税額控除の上乗せ措置として、雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が 2.5%以上である場合には、税額控除率に 15%を加算し、教育訓練費の対前年度増加割合が 10%以上である場合には、税額控除率に 10%を加算する措置を講ずる。
○ オープンイノベーション促進税制の拡充
・出資の対象会社に、設立 10 年以上 15 年未満の売上高に占める研究開発費の割合が 10%以上の赤字会社を追加する等の見直しを行う。
○ 5G導入促進税制の見直し
・地方でのネットワーク整備を加速する等の観点から、対象設備の要件や税額控除率等の見直しを行う。
○ 大法人に対する法人事業税所得割の軽減税率の見直し
・外形標準課税対象法人(資本金1億円超の法人)の年 800 万円以下の所得に係る軽減税率を廃止し、標準税率を 1.0%とする。
○ ガス供給業に係る法人事業税の課税方式の見直し
・導管部門の法的分離の対象となる法人等が行う事業(導管事業を除く。)については収入割額、付加価値割額及び資本割額の合算額により課することとし、その他の法人が行う事業(導管事業を除く。)については他の一般の事業と同様とする。

消費課税

○ 自動車重量税におけるキャッシュレス納付制度の創設
・自動車重量税をクレジットカード等により納付することを可能とする制度を創設する。
○ 航空機燃料税の税率の見直し
・航空機燃料税の税率の特例措置について、税率を見直した上で、適用期限を1年延長する。
○ 沖縄県産酒類に係る酒税の軽減措置の段階的廃止等
・沖縄の復帰に伴う激変緩和措置として設けられた沖縄県産酒類に係る酒税の特例について、復帰 50 年を迎え、酒類製造業界から提言がなされたことなどを踏まえ、沖縄の酒類製造業の自立的発展に向けた施策の一環として、最長 10 年をかけて段階的に廃止する。

納税環境整備

税理士制度の見直し
・税理士は、業務のICT化等を通じて納税義務者の利便の向上等を図るよう努めるものとする旨の規定を創設する。
・若年層の税理士試験の受験を容易にし、多様な人材確保を図るため、受験資格要件の緩和を実施する。
○ 記帳義務を適正に履行しない納税者等への対応
・記帳義務を適正に履行しない納税者への過少申告加算税等の加重措置を整備する。
・証拠書類のない簿外経費についての必要経費・損金不算入措置を創設する。
○ 財産債務調書制度の見直し
・提出期限を後倒しするなど提出義務者の事務負担の軽減を図るとともに、適正な課税を確保する観点から、現行の提出義務者に加えて、特に高額な資産保有者については所得基準によらずに本調書の提出義務者とする措置を講ずる。
○ 地方税務手続のデジタル化
・ eLTAX(地方税のオンライン手続のためのシステム)を通じた電子申告・申請の対象手続や電子納付の対象税目・納付手段を拡大する。

関税

○ 暫定税率等の適用期限の延長等
・令和3年度末に適用期限の到来する暫定税率(412 品目)の適用期限を1年延長する等の措置を講ずる。
○ 海外の事業者を仕出人とする模倣品の水際取締りの強化
・改正商標法及び意匠法の施行に合わせ、海外事業者から国内の事業性のない者に宛てて郵送等で持ち込まれた模倣品(商標権等侵害物品)を関税法の「輸入してはならない貨物」として規定するとともに、事業性のない輸入者に対する罰則の除外及び侵害物品の認定手続に係る所要の規定の整備を行う。

財務省「税制改正の大綱の概要(令和3年12月24日 閣議決定) https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2019/31taikou_gaiyou.pdf(2022年1月6日)

相続税に強い税理士なら、長野県松本市の小沢税務会計事務所

【令和4年度 税制改正大綱のポイント】

 今回の改正は「成長と分配の好循環の実現」「経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し」等を中心とされているようですが、相続等に関しては目立った改正点はないという印象です。

 ここでは、令和4年度税制改正大綱の相続に係る資産課税について取り上げます。

  

・住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の見直し

 住宅資金贈与の非課税措置は、直系尊属(父母や祖父母)からの資金贈与により自宅(又はその土地)の新築、取得又は増改築等をした際に、一定額まで非課税で贈与することができる制度です。

 当制度については現行の非課税措置が令和5年末まで延長されます。

 ただし、非課税限度額について以下のようになりました。

 ① 耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋 1,000万円

 ② 上記以外の住宅用家屋  500万円

 

 非課税限度額については段階的に引き下げられる予定でありましたが、前年より500万円減額された点より増税とも言える改正でしょう。

 

・住宅ローン控除制度の見直し

 住宅ローン控除制度(住宅借入金等特別控除)は、個人が住宅ローン等を利用して自宅(又はその土地)の新築、取得等をした際に住宅ローンの年末残高(所定の借入限度額を上限)に控除率を乗じた額について、所得税(住民税)から税額控除できる制度です。

 当制度については現行の住宅ローン控除が令和7年末までの入居者を対象に延長されます。

 一方で、控除率は現行1%のところ、0.7%減額されています。

 また、適用対象者の所得要件について現行3,000万円以下のところ、 2,000万円以下減額されています。

 住宅の種類による借入限度額についても変更がありますので注意してください。

 

 控除率や当制度を適用することができる対象者が減っている点より増税とも言える改正でしょう。

 

法人版事業承継税制における特例承継計画の提出期限延長

 法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、先代の非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その相続税や贈与税を猶予し、納付が免除される制度です。

 事業承継税制を適用するためには特例承継計画の提出が必要となっており、提出期限を従来の令和5年3月31日から令和6年3⽉31⽇1年間延長します。

 個人版事業承継税制について期限の見直しはありません。

 また、事業承継税制特例制度の適用期限である令和9年12⽉31⽇(法人版)令和10年12⽉31⽇(個人版)については現行通りとなります。

  

 実際に事業承継を行う適用期限については変わらないものの、法人版の承継計画の提出期限が伸びた点より、事業承継に取り組む猶予ができたとも言える改正でしょう。

【まとめ】

 令和4年度税制改正大綱では従来と大きく変わるところはないですが、法人の賃上げ税制などの景気対策がある一方、住宅ローン減税や住宅資金贈与など制度・特例対象者の引き締めを進められている印象もあります。

 また電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存や納税方法の拡充など、昨年と同様にポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環やデータ化による業務の効率化を進められています。

 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関しては、現代の一般的な経理処理として該当する方が多いかと思われますので別の記事で紹介させていただきます。

  

 資産課税については課税強化となる部分もあり、今後も引き締めが続くと考えます。